みなさんは「黒杉(クロスギ)」という名前をお聞きになったことがありますでしょうか?
杉材は白身と赤身の部分に別れているのですが、どういうわけか稀に赤身の部分が黒く変色していく素材があります。
木材内の成分が空気中の酸素と触れることによって酸化化合することで黒く変色していくということは現時点ではわかっているようですが、なぜそのような現象を起こす杉材が生まれるのかまでは原因がはっきりとわからないようです。
今回は「黒杉の発生率を下げる取り組み」についてお伝えいたします。
※切ったばかりの杉材は赤身がはっきりと残っているのが分かります。
※時間が経つにつれ、表面が黒ずんで行くのがわかります。
黒杉は嫌われ者?
実はこの黒杉。昔から我々製材業者を悩ませる一つの種でもありました。
心材で水分を多く含んでる為非常に重く、乾燥がしづらい。
更には見栄えがよくないという理由から商品価値が落ちてしまう・・・。
特に建築業者さんなどは内装の出来がまだらになってしまうため、嫌われる傾向にありました。
黒杉で統一した、古民家風な家造りができる反面、数があまりとれないということもあり、なかなか一般的な商品として扱うのが難しいのも、黒杉ならではの特長です。
黒杉を発生させにくくするための取り組み
品質を追求する梅江製材所としては、なんとかこの黒杉を発生させにくくすることができないかということに、以前からチャレンジしてきました。
ポイントは・・・
というのが、過去の経験から分かっています。
そこで当社では、非常に手間暇がかかるやり方なのですが、品質アップのため乾燥時に下記の取り組みを行っています。
通常、製材した木を乾燥させる場合、1枚1枚を桟木に乗せ、乾燥を行います。
この際、木表と木裏が常に空気に触れる状態となります。
※通常の組み方と梅江製材所のやり方の違い
※木表同士を向かい合わせて組んでいる様子
空気に触れ、短時間で乾燥をさせると、黒杉の発生する確率があがることから、一度木表同士を向かい合わせて空気に触れにくい状態で乾燥を行います。
こうすることで木表の部分が空気に触れにくい状態になるだけでなく、ゆっくりと乾燥がすすむため黒杉の発生が少なくなります。
※ 乾燥後に一枚一枚を桟木に乗せて組み直している様子。
一定時間経過後、完全に乾燥させるため、再度1枚1枚を桟木に乗せ、乾燥を行います。
乾燥が完了すると表面を削り、美しい商品へと仕上げていきます。
※ 組み直した後に再度乾燥を行っています。
通常通りの乾燥をするとどうなるの?
下記は2枚の板の乾燥方法を変えた場合の写真です。
上の写真は一般的に1枚1枚を乾燥させた場合です。表面が酸化し黒くなっているのが分かります。
上の写真は木表同士を向かい合わせて乾燥させた場合の材です。
桟木をおいていた部分は空気に触れる時間が少ないため、黒ずみが抑えられています。
削った様子。空気に触れる表面ほど黒ずんでいるのが分かります。
いかがでしたでしょうか?
昔から敬遠されがちな黒杉ではありますが、乾燥方法一つでその発生率を下げることができます。
乾燥時間も通常より長く、また人手も必要になるため、非常に手間のかかるやり方ではありますが、その手間を省かずに取り組むことで非常にキレイな材へと生まれ変わります。
当社では今後も手間を惜しまずに品質向上に向けて取り組んでいきます。