家の床や壁、家具など、私たちの暮らしの中にはたくさんの木が使われています。
しかしその木が「どこで育った木なのか」まで意識する機会は、意外と少ないのではないでしょうか。
実は今、国は国産材の利用を積極的にすすめています。
10月は「木材利用促進月間」です。
林野庁をはじめ国では「ウッド・チェンジ」を合言葉に、建物や暮らしの中で木を使うことを呼びかけています。
今回は、なぜ今国産材の利用がすすめられているのか、その背景や外国産材との違いについてわかりやすくご紹介します。
目次
10月は「木材利用促進月間」。国も木を使うことをすすめています

なぜ、いま改めて木を使うことがすすめられているのでしょうか。
その背景をたどっていくと、日本の森が今「育てる時代」から「育った木を使い、次の森へつないでいく時代」へ移っていることが見えてきます。
2021年には、木材利用を後押しする国の取り組みがさらに大きく広がりました。
それまでの法律では、国や自治体の庁舎、学校など「公共建築物」で木材を使うことが主な対象でした。
しかし法改正によって、木材利用をすすめる対象は、店舗やオフィス、マンションなどの民間建築物を含む「建築物全般」へと拡大されました。
これは、社会全体で木材をもっと活用していこうという国の方針が、より明確になったということです。
現在では、国が自ら公共建築物で木材利用をすすめるだけでなく、民間の建物についても木造化や内装の木質化を促しています。さらに、家具や日用品など暮らしの中に木を取り入れることも「ウッド・チェンジ」として呼びかけられています。
つまり今、木を使うことは、単に「木の家を建てる」「木の家具を選ぶ」という個人の好みだけではなく、森林資源を活用しながら次の森へつないでいくための取り組みとして、国を挙げてすすめられているのです。
では、なぜ国がここまで木材利用をすすめているのでしょうか。
理由のひとつが、日本の森林の現状です。
日本の森はいま、「育った木を使う時期」を迎えています
日本は、国土のおよそ3分の2を森林が占める森林国です。そのうち約4割は、杉やヒノキなどを人の手で植えて育ててきた「人工林」です。
戦中・戦後には木材が大量に必要とされ、多くの山で木が伐られました。その後、荒れた山を回復させることや、高度経済成長期の木材需要に応えるため、全国で杉やヒノキなどの植林が進められました。
それから数十年。当時植えられた木々の多くが大きく育ち、現在では木材として利用できる時期を迎えています。林野庁も、日本の人工林について「本格的な利用期を迎えている」としています。
つまり、日本の森は今、ただ木を育て続けるだけではなく、育った木を伐って使い、そのあとに新しい木を植え、次の世代の森を育てていく段階に来ているのです。
近年の森林・林業白書でも、伐採後の再造林を着実に進めることや、木材利用の推進が取り上げられています。
日本で使われている木のすべてが、国産材ではありません

森林がこれだけ多い日本ですが、国内で使われる木材がすべて日本の山から採られているわけではありません。
2024年の日本の木材自給率は42.5%。国内生産量は約3,481万立方メートル、輸入量は約4,707万立方メートルでした。
つまり、現在も私たちが使っている木材の多くを外国産材が支えています。
ここで大切なのは、「国産材が良くて、外国産材が悪い」と単純に分けることではありません。
それぞれに特徴があります。
国産材と外国産材、それぞれの違い
国産材にも外国産材にも、使う目的や場所によってメリットがあります。
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国産材 |
外国産材 |
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主な特徴 |
杉やヒノキなど、日本で古くから使われてきた樹種が多い |
国内では採れないものも含め、さまざまな樹種から選べる |
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供給 |
国内で生産・加工できる |
海外から大量に調達できるものも多い |
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価格 |
樹種・産地・加工方法などによって異なる |
樹種などによって価格競争力がある一方、為替や海上輸送などの影響を受ける |
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森林との関係 |
利用が国内の林業や森林整備につながる |
産地や森林管理の方法によって異なる |
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注意したいこと |
地域や製品によって供給量・加工体制に差がある |
海外の需要や物流、為替などの影響を受けることがある |
外国産材は、大量に調達しやすいものや、日本にはない特徴を持った樹種を選べることが大きな魅力です。
一方、海外から木材を運ぶ以上、世界的な需要や海上輸送、為替などの影響を受けることがあります。
実際に2021年の「ウッドショック」では、北米での木材需要の増加やコンテナ不足、海上輸送の混乱などが重なり、日本でも輸入木材の不足や価格上昇が起こりました。
こうした経験からも、海外からの木材だけに頼るのではなく、国内にある森林資源を活用していくことの重要性が改めて注目されています。
日本で育ってきた木を、日本の暮らしに使う
杉やヒノキは、日本の気候風土に合った木として各地で植えられ、昔から住宅や建築物、生活道具などに使われてきました。
日本の家に国産材が使われてきた背景には、見た目や香りだけでなく、日本の気候や暮らしとの相性があります。高温多湿で、季節ごとの気温や湿度の変化も大きい日本では、木材にもそうした環境に合わせた使い方が求められてきました。
ただ日本は北海道から九州まで南北に長く、地域によって気温や雨量、寒暖差、地形も大きく異なります。育つ環境が違えば、同じ杉やヒノキでも、成長のしかたや年輪、木目、色合いなどに違いが生まれます。
そのため、「国産材」とひとまとめにするのではなく、どこで育った木なのかを見ることも、木材選びのひとつのポイントになります。
たとえば、寒冷な地域でゆっくり育った木と、温暖で雨の多い地域で育った木では、それぞれに異なる特徴があります。さらに、樹種によって硬さや重さ、香り、耐久性なども違うため、床や壁、天井、家具など、使う場所によって向いている木も変わります。
だからこそ、価格だけで選ぶのではなく、どこで育った木なのか、どんな特徴があるのか、どこに使うのか。
そうした背景まで知ったうえで、日本の気候の中で育ってきた木から、暮らしや用途に合ったものを選ぶこと。
それが国産材を暮らしに取り入れるときの、ひとつの考え方です。
人工林は「伐って、使って、植えて、育てる」

ここまで「国産材を使おう」という話をすると「でも、木をどんどん使ったら森がなくなってしまうのでは?」と思う方もいるかもしれません。
確かに、森林をむやみに伐採することは森林破壊につながります。しかし、日本の人工林について考える場合、「木を伐ること=森林破壊」とは限りません。
むしろ大切なのは、育った木を適切に伐って使い、また植えて育てることです。
林野庁は、人工林について、「伐って、使って、植えて、育てる」という循環を進めることが大切だとしています。木材を生産するために植えられた人工林では、木を育て、利用できる大きさになったら伐採し、その木を住宅や家具などに使います。
そして伐った場所には新しい苗木を植え、また長い時間をかけて森を育てていきます。
ただ現状では、伐採した面積に対して新たに植林される面積は3〜4割程度にとどまっており、伐採後の再造林をどう進めるかが大きな課題になっています。その背景のひとつが、木材価格の低迷や植林・保育にかかる費用の負担です。
木材が売れることで得られた収入は、木を伐り出すための費用だけでなく、次の木を植え、育てていく林業を続けるための力にもなります。
逆に、育った木が使われなければ、林業として収入を得ることが難しくなり、伐採後の植林や森林の管理を続けることも難しくなります。
だから現在は、「なるべく木を使わない」のではなく、持続可能なかたちで木を使い、次の森林へつなげていくことが重要だと考えられているのです。
国産材を使うことは、その循環を私たちの暮らしから支える方法のひとつです。
森を管理することは、人と野生動物とのすみ分けにもつながります

近年、日本各地でクマが人里に出没するニュースを目にする機会も増えました。
クマの出没には、木の実の豊凶や個体数、人里にある食べ物など、さまざまな原因がありますが、環境省は、クマによる被害を防ぐための対策として、人里周辺の里山林や耕作放棄地などで藪を刈り払い、クマが生息・滞在しにくい環境をつくることを挙げています。
森や里山に人の手が入り、適切に管理されていることは、人と野生動物の生活圏を分けるうえでも大切です。
木材を利用すること、林業を続けること、森林を管理すること。
一見別々に見えるこれらのことも、実はつながっています。
木を使うことから、次の森へ

木には、一枚一枚違う木目があります。触れたときのあたたかさや、杉ならではの香り、時間とともに変化していく色合いもあります。
私たちが長く木を扱ってきた中でも、こうした木の魅力は、数字や性能だけでは伝えきれないものだと感じます。
そして今、その木を暮らしの中で使うことには、もうひとつの意味があります。
日本の山で育った木を使う。
育った木を伐る。
そのあとに新しい木を植える。
そして、また次の世代へ森をつないでいく。
10月の木材利用促進月間をきっかけに、床や壁、家具など身近にある木を見ながら、「これはどこで育った木だろう」と少しだけ考えてみてはいかがでしょうか。
木を使う楽しさも、杉という素材のおもしろさも、まだまだたくさんあります。
これからも梅江製材所では、木に触れてきた私たちだからこそ伝えられる木の魅力を、少しずつお届けしていきたいと思います。





