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梅江製材所通信

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お掃除にご注意!杉板×重曹に落とし穴

みなさん、こんにちは。
梅江製材所の梅江です。

今回は、お掃除の定番アイテムで起こる危険な現象についてお話させていただこうと思います。

意外と知られていない杉板と○○の危険

お掃除の定番「○○」が黒いシミを作る

先日、腰板用の杉の羽目板を購入されたお客様から、あるご相談のメールとお写真をいただきました。

 

先日腰板を購入しました、●●です。
〜中略〜
濡れたタオルで取れればと拭いたところ広がってしまいました、
張り替えればいいとはおもいますが。
対処方法があれば教えていただきたくてメールしました。
〜後略〜
 

こちらはお送りいただいた実際の写真です。
当店でご購入いただいた腰板の汚れを落とそうとしたところ、まるで墨で塗ったかのように板の一部が真っ黒に変色していたのです。

 

せっかくの腰板が真っ黒に変色してしまい、お客様はとても驚かれたと思います。
写真を見た私たちも「ここまで色が変わるなんて!」とビックリしました。

 

そして、どのようなお掃除をされたのかお話を伺ってみたところ、この「黒いシミ」の正体がわかってきました。

 

「○○」の正体は・・・「重曹」

お客様は、お掃除に特殊な洗剤を使用していたわけではありません。
むしろ、誰でも一度は触れたことがあるほど身近なモノが、黒いシミを作り出した犯人だったのです。

 

それは、「重曹」。

 

お客様は、薄めた重曹を含ませた布で、腰板の汚れを落とそうとしていたようなのです。

 

みなさんもご存知の通り、重曹は珍しいものではありません。
お掃除用品やお料理に使われることが多く、とても馴染み深い存在です。
重曹を使用したお掃除は、ペットや小さなお子様がいるご家庭では定番といってもいいくらいでしょう。

 

では、なぜこの「重曹」を使用したお掃除が、このような変色を起こしてしまったのでしょうか。

 

種類によって差がありますが、木材には「タンニン」「リグニン」という成分が含まれています。
このタンニン&リグニンがアルカリ性の物質と触れ合ったときに化学反応を起こし、無垢材が黒く変色してしまうのです。

 

特にタンニンが多く含まれている部分や木には、強く反応が出るそうです。
梅江製材所が主に取り扱っている「杉」にも、このタンニンは多く含まれています。

 

重曹(アルカリ)と木の成分の化学反応実験

お客様の当時の状況を再現してみました。

そこで、私たちも杉の羽目板を使用した実験を行なってみました。
こちらが実験を行う前の板の写真です。

左:白太&赤身 真ん中:総赤身 右:フローリング用オイル塗装

 

色の濃い部分は丸太の芯に近い部分で「赤身」と呼ばれ、色が淡い部分は丸太の外側で「白太」と言います。

ちなみに、「赤身」の部分にはタンニンが多く含まれています。

 

今回は総赤身の羽目板、白太の部分が多い羽目板、 そして「オスモ」というフローリング用のオイル塗装を施した羽目板も用意してみました。

 

重曹を薄めた水をスポンジに染み込ませ、実際のお掃除と同じように羽目板にゴシゴシと擦り付けていきます。

 

すると、10分〜20分も経たないうちに重曹水を塗った箇所が黒ずみはじめ、その後もどんどん黒くなっていきました。

重曹を塗ったあと、約1日ほど経過した様子がこちらです。

左:白太&赤身 真ん中:総赤身 右:フローリング用オイル塗装

 

やはり、タンニンを多く含む赤身の部分は濃い黒に変色しています。
赤身以外の部分はグレーっぽくなっています。赤身部分より変化は薄いとはいえ、やはり一目見てわかる程度には変色してしまっています。

 

オスモで塗装をしていた杉(右端)も、じわじわ時間をかけて重曹水が浸透していったのか、変色を防ぐことはできませんでした。

 

ここまで変色してしまった無垢の羽目板。
張り替えしか手段はないのでしょうか?

 

重曹(アルカリ性)と酢(酸性)の中和実験

お酢と中和させれば変色が消える?

 

重曹を使用したお掃除には思わぬ危険が潜んでいることがわかりました。
調べてみたところ、どうやらアルカリ性で化学反応を起こし、変色してしまった板は、
「酸性の液体(お酢等)でアルカリ性と中和させ、反応を元に戻す」
という方法があるようです。
炭を塗ったかのように真っ黒な板が、お酢で本当に元に戻るのでしょうか。

 

というわけで、こちらもそれぞれ濃度の違うお酢を使って実験してみました。

左:白太&赤身 真ん中:総赤身 右:フローリング用オイル塗装

 

濃度の違うお酢をそれぞれ塗り、1日経過した写真がこちらです。
黒いシミの部分が少しだけ薄くなっています。
ご覧の通り、黒いシミが薄くなる程度の効果は見られましたが、「完全に元通り」という状態は難しいようです。特に、赤身の部分は強い化学反応を起こしているためか、シミがほとんど落ちていない箇所もありました。
また、黒いシミが消えている部分も元の色には戻っていません。今回は、重曹水が木の内側に浸透してしまっているため、ヤスリで表面を削るのもあまり効果はなさそうです。重曹水と同じ濃度のお酢で上手に中和できた場合や、変色してすぐに対処した場合には、もう少しはっきりとした効果が見られる可能性はあります。 

このあと、「弱アルカリ性」と書かれたある洗剤を使用した実験を行いましたが、こちらでは重曹ほど強い変色は見られませんでした。どうやら、アルカリ濃度が高ければ高いほど、変色が強くなるようです。

 

重曹はNG。正しい無垢板のお掃除は?

無垢板のお掃除には重曹(あるいはアルカリ性洗剤)を使用しないほうが良いようです。
では、日々のお掃除ではどのような方法が正しいのでしょうか?
梅江製材所が推奨しているのは、
「乾いた雑巾」か「水で濡らしたあと、固く絞った雑巾」で丹念に板を拭き上げる方法
です。
「それだけでいいの?」と驚かれるかもしれませんが、自然素材にはシンプルで昔ながらのお掃除が一番なのです。実は、自然素材が化学反応を起こすのは珍しいことではありません。
例えば杉は、時間の経過とともに飴色に変化していきます。これを「経年劣化」を楽しまれている方も多いのですが、これも化学反応のひとつ。
こういった色味の変化を「味わい」として楽しんでしまえるのも、天然素材のメリットです。うまく付き合っていけば、長い期間楽しむことができる天然素材。
メリットとデメリットに注意しながら、上手に日々の暮らしに取り入れていただけたらと思います。

監修者紹介

九州 大分県日田市にある梅江製材所の代表、梅江康弘です。
創業50年、木の魅力を探求し続けてまいりました。
厳選した木材のみを製材し、良質で綺麗な羽目板をお客様に自信を持ってお届けしています。

監修者:梅江康弘

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