次世代に繋がる植林
植林への取り組みについて
当社では私の父の代(今から50年以上前になります)から、熊本県の方に山を所有しており、植林活動を行っています。植林という言葉自体は皆さんもご存知だったり、植林活動をボランティアでされた経験がある方も多いかもしれませんね。
木はCO2を吸ってO2を出す、自然の酵素発生装置(空気清浄機)です。地球温暖化の原因といわれているCO2削減のためにも、植林はとても大切な活動なのです。
今日は当社が行っている植林の取り組みと内容についてお伝えしたいと思います。
木が出来上がり、商品化されるまでのサイクル
1本の木ができあがり商品となるまでには非常に長い時間がかかります。
大きな流れとしては、
という大きな流れがあり、このサイクルを約20〜50年かけて行っています。
長伐期材(優良材、銘木)は90年以上かかります。
植林について
最近は山を買うという人は以前に比べ全く減ってしまったんですが、「林業家」と呼ばれる人達は山を買って植林をしていきます。買ったばかりの山は最初は雑木林なんです。そこから立木を切るために林道をつくり、徐々に中に入っていき全部の木を伐採していきます。(全伐といいます)現在はクローラーによる搬出が主になっていますが、昔はワイヤーを担いで山を登って、ワイヤーを張り滑車で木を下ろしていたんですよ。今でこそ重労働ですし、危険なためやっている方は減少していますけどね。
杉は種から育てられ3年ぐらいたつと苗の状態で山に植えていきます。この作業を「植林」と呼んでいます。植林を行う前には全伐し、散らばっている枝や葉を掃除してから行うのですが、全伐をした際は木の根などはそのままにしておきます。根は放おって置くと腐って腐葉土になりますので、肥料として活用することができるんです。
当社は8ヘクタールの山を持っていますので、8人で1週間程度かけて植林を行っています。
2m×2mの間隔(4m2に1本の割合)で植林していますので、1ヘクタールにつき平均2,500本、8ヘクタール×2,500本で、20,000本の植林を行いました。
下草刈りについて
植林して2~3年経った苗はまだまだ背丈の小さいものです。植林して1~2年のころというのは根に力を蓄えるため背丈が急に伸びることはありません。そのため周りの雑草などに背を追い越されてしまうと日が当たらなくなり、幼い木は育たなくなってしまいます。
そのような事態を防ぐために下草刈りとよばれる木の周囲の雑草などを刈る作業を年に1~2回ほど行っています。光合成を促進するためです。また木には「かずら」と呼ばれるツタをまく植物などがあります。巻かれたままだと成長の促進を抑えてしまうことがあるので、下刈りをしている最中に取り除いたりもしています。
間伐について
5~6年ほど経つと杉の幹も大きくなりはじめ、比較的高さも大きく育ちます。このころにはもう下草刈りの作業をする必要もなくなり定期的に山に言っては「かずら」がないかをチェックしています。
植林から15年程度経つと「間伐」と呼ばれるある程度大きくなった木を伐り、森の中に光をいれていく作業にはいります。木が大きくなると幹も太くなるため、木と木の間は段々と混みあい光が入らなくなっていきます。
光が当たらなくなると光合成ができないため、成長が遅くなったり、幹が太くならず倒れやすくなりますので、良い木を残して間隔をあけていくという作業を行っていきます。
枝打ちについて
節がなくて素性の良い木をつくるために「枝打ち」という作業を間伐と一緒にすすめていきます。成長とともに、木の下の方の枝には光が当たらなくなり、葉っぱが全て落ちた枯れ枝がおおくなっていきます。
枝打ちというのはこの枯れ枝を取っていく作業なんですが、そのままの状態にしておくと羽目板にした際に「しに節」と言われる節のある材料になってしまいます。素性の良い木を作るには必要な作業なんです。
伐採について
植林してから充分に育った木を計画的に伐っていくことを伐採と呼びます。
伐採された木はトラックに積み込まれ原木市場に運ばれ、製材所が商品化していくという流れになります。
国内にある木を見ると1029万ヘクタールが人工林と言われており、そのうち杉は4割以上を占めています。
日本は杉の植林が非常に多いのですが、生育の早さや加工のしやすさが特徴的で建築材にも活用されるため戦後国が促進して植林を行ってきました。
私の父も山が好きで林業を営んでいましたが、正直私の息子や孫の代まで続いていくかはまだ分かりません。
ですが私が生きている間は、しっかりと植林を行い、山を荒らさないようにして守り続けて行ければと思っています。
梅江製材所が管理している杉山
今から約20年前のことになりますが、大型の台風により根こそぎ森がやられてしまうという事がありました。
当時は現在のような林道がなく、倒れた木を運び出すことさえできない状態でした。せっかく育った木を出荷できないということは林業を営む私たちとしては死活問題だったんですね。
山というのは多くの山主が管理を行っていますが、風倒木をそのままの放置した状態にしておいては共倒れになってしまいかねない状況だったため、皆で話し合い、土地を少しずつ出し合ってこの林道を作ったのです。(当時は補助金を活用して林道を作りました)
害獣被害により成長が疎かなものも・・・
次にこちらの写真ですが、まだ植林をして10年以内のものばかりです。
(害獣被害にあっているため成長が疎らです)
こちらの木は鹿から被害にあったものです。幹の皮がほとんど食べられてしまっていますね。
同じ時期に植林をしても、一度被害にあってしまうと成長するスピードが変わってきます。(場合によっては育たなくなるケースも)
被害を受けずに育った杉の木は4年立つと写真の大きさになります。
このくらいの大きさになると下草を刈らなくても、自分でグングンと成長していくんですね。
日頃から丹念に手入れをして立派な杉に育てていきます。
こちらの左側の写真は7年くらい経った杉の木です。私の身長の何倍にも成長しています。
右側の写真の奥の木は30年~50年経っている木です。もうここまでくると相当立派な木になっていますね。
一見まっすぐに伸びている杉の木ですが、実は向きを変えてみると曲がっていたり・・・下から見るとよじれているのがハッキリとわかります。
手入れが遅れてしまうと、光の入ってくる量が極端に少なくなり、全体的に成長が悪くなり、まがったり、S字にうねったりする木が増えていってしまいます。悪い木を切れば、光が当たり始め、木と木の間に光がしっかりと差し込み、また真っ直ぐに成長し始めるのですが、真っ直ぐになるにはもう10年から20年の長い年月がかかるのです。
また、枝打ちをすることで節の少ない良い木を育てることができます。枝を落とすことにより節をなくしていく事ができますが、枝がないと成長が遅くなるという相反することになります。木の成長を見極めながら日頃から手入れをするということが素性の良い木をつくるためには欠かせないんですね。
土砂災害の対策として広葉樹も植えています。
ところで、杉や桧と一緒に広葉樹も植えているのはご存知でしょうか?
実は針葉樹だけの森というのは土砂災害などが多くなる傾向があります。一体なぜなんでしょうか?
それは針葉樹と広葉樹の根の張り方の違いがあります。
一般的に針葉樹は根が奥深くまで成長しません。反面、広葉樹はいたるところに深く根を張るため地面を固めてくれる役割があります。この性質を利用して、針葉樹との間には適度に広葉樹を植林していっているのです。
こちらは「一般社団法人緑の循環認証会議(SGEC)」の考え方に基づき、森の循環を考えた植林方法で活動を行っています。
このあたり一体は今は木が生い茂っていますが、20年前はすべてが平地で何もありませんでした。
この場所に植林を行って今の姿がありますが、最初は小さかった木がどんどん太って、あっという間に風景が変わっていきました。
木を1本育てるのには非常に時間がかかりますが、反面愛着が非常に湧いてきます。
「自分が育てた木に対してはしっかりと、手入れをしてあげたい」という気持ちが大きくなりますね。
長い目で見て新たな森を作っていくということが林業を営む私たちにとっては重要なことなのです。